研究概要 |
分子複合材料の調製方法の開発にあたって、pーアラミド(PPTA)を強化分子とし、屈曲分子に(1)ナイロン(NY)、(2)ポリアクリロニトリル(PAN)をモデル系に選んだ。PPTA/NY系は硫酸溶媒を用いたが、PPTAの高濃度では、液晶形成と結晶速度の速さがミクロ組織の均一性に不利であった。これに対し、PPTAポリアニオンのDMSO溶液は、高温濃縮により、高濃度でも光学的等方性であり、PANのDMSO溶液との相溶性も良好であるので、この系のレオロジ-挙動を検討した。先ず、PANは、分子量130,000から1,500,000までを用意し、レオメ-タ-(NRー1100:西鐵工所)により、DMSO溶液の粘弾性を測定し、分子の絡み合いの状態を検討した。他方、PPTAポリアニオン単独のDMSO溶液について、粘弾性測定を行った。分子量50,000のPPTAアニオン試料のDMSOの溶液では、2価の金属イオンとして、Zn^<2+>イオンを加えることにより、動的粘弾性がほぼ2倍増加する効果を見いだした。この効果は実質的にPPTAアニオンの分子量を増加したことを意味する。これにより、PANの絡み合い効果とあいまって、PPTAの再生凝固時に、PPTA分子相互の凝集結晶化を抑制し、より均一な分子複合材料を調製する可能性が期待されることになった。別に、予備実験として、PPTAポリアニオン/PANの共存DMSO溶液より、剪断下、電析法により、より高い力学的異方性を示し、かつ、弾性率14GPa、強度370MPaを得た。PPTA単独の結晶組織より、より均一な組織が分子複合化により達成されることを示唆し、本研究にとり有利な成果を期待させるものである。なお、DMSO可溶で、より耐熱性をもつシアノアリ-ル系の母材樹脂をPANに替わるものとして探索している。
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