研究概要 |
微量イオン捕集と濾過という二つの機能を備えた膜は、超純水製造、バイオ生産物精製などの分離精製プロセスに利用できる。本研究では、エポキシ基を有するメタクリル酸グルシジルを反応性モノマ-として用い、キレ-ト形成基としてイミノジ酢酸基(ーN(CH_2COOH)_2)を選択した.この複合機能膜に要求される条件は、基材膜の透水性能を維持しながら、高いキレ-ト形成基密度をもつことである。また、この膜が実用化されるには、グラフト重合反応装置を設計して、機能膜を均一に、速く、低コストで製造する手法を確立する必要がある。本研究の目的は、(1)キレ-ト形成基を有する複合機能膜の合成とその最適化、(2)複合機能 膜製造装置の反応工学的解析、および(3)複合機能膜モジュ-ルのプロセスへの応用の検討という三つの研究を行い、新規の複合機能膜を実用化することである.本年度は,キレ-ト形成基を有する複合機能膜の合成とその基礎物性の測定を行った.(1)放射線前照射気相グラフト重合法による中空糸状複合機能膜の合成:精密濾過用として使用されている中空糸状多孔性ポリエチレン膜(平均孔径0.1μm、空孔率75%、膜厚300μm)を基材に、電子線を照射してラジカルを生じさせ、それを気相でモノマ-と接触させてグラフト重合反応を行った.基材に対するモノマ-の重量比とキレ-ト形成基導入反応の反応率を組合わせることによって,キレ-ト形成基密度が約1moL/kgの複合機能膜を合成できた.この官能基密度はビ-ズ状のキレ-ト樹脂に相当した.(2)複合機能膜の基礎物性の測定:合成した複合機能膜の細孔分布、比表面積の測定および電子顕微鏡による断面の観察を行った.グラフト重合に伴い,多孔性膜全体が膨潤するので,グラフト鎖による細孔の閉塞を防ぐことができるこを示した.得られる膜の水の透過流量は基材のそれの約1/2程度の減少であり,精密濾過膜として十分利用できることがわかった.
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