研究概要 |
水溶液中にppbの濃度で溶存している金属イオンを捕集するために有効な材料はキレート形成基を有する樹脂である.本研究では,精密濾過用の中空糸状多孔性ポリエチレン膜に,放射線を利用して,キレート形成基を導入可能な反応性モノマーをグラフト(接木)重合後,変換反応によりキレート中空糸膜を合成した.「放射線前照射気相グラフト重合法による中空糸状複合機能膜の製造プロセスの開発」に関して,昨年度までにつぎの3点について検討を終えた.(1)キレート形成基を有する複合機能膜の合成とその基礎物性の測定,(2)イオン捕集を伴う透過での性能評価,および(3)気相グラフト重合のための新装置の提案を行った.その成果を基にして,平成4年度は以下の実験を実施し,つぎの研究成果を得た.(1)機能膜をモジュールにして,模擬溶液を用いて金属イオン捕集を伴う透水実験をおこなった.膜内面から圧力をかけて外面へ液を透過させる間に,膜内部の孔に配置されたキレート形成基によってイオンが捕捉される.膜外面での金属イオン濃度を追跡して破過曲線を得た.拡散抵抗が無視できる点で,微量濃度のコバルトイオンの理想的な除去方法であった.(2)加圧水型原子力発電所の冷却水系でのコバルトイオン捕集に複合機能膜を応用した場合のプロセスの設計を行い,現行のプロセスと比較した.なお、本研究で提案したシステムは,加圧水型原子力発電所でのコバルトイオン捕集方法として試験採用されることになった.
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