研究概要 |
ヒマの2種のカタラ-ゼ遺伝子CAT1とCAT3のプロモ-タ-の内、CAT3遺伝子のプロモ-タ-はカリフラワ-モザイクウィルス35SRNA(CaMV35S)のプロモ-タ-よりも強力で、形質転換植物作出上極めて有用であることがわかった。そこで、CAT3遺伝子のプロモ-タ-を詳細に解析するために、CAT3遺伝子の5種の長さ(4300,1241,816,535,380ベ-スペア-,bp)の5'上流域と細菌のβグルクロニダ-ゼ(GUS)遺伝子の融合遺伝子CAT3-GUS融合遺伝子を作製し、これをタバコに導入してGUS遺伝子の発現を解析した。タバコ培養細胞における一過性発現およびタバコカルス細胞における安定発現を調べた結果、CAT3遺伝子の5'上流域4300bpの全域にわたって、プロモ-タ-活性を促進するシスエレメントが多数存在していることが明らかになった。すなわち、CAT3遺伝子のプロモ-タ-がCaMV35Sプロモ-タ-よりも強力なのは、これらの多数のシスエレメントの存在によることが示唆された。次に、CAT3-GUS融合遺伝子を導入した形質転換タバコを育成し、種子を採集して種子発芽に伴うGUS遺伝子の発現の様相を調べた。乾燥種子に存在するGUSは種子形成の際にこの融合遺伝子が発現した結果とみなすことができる。この想定をもとにすると、CAT3遺伝子の翻訳開始コドンから数えて‐535から‐816の間に種子形成中その胚での発現に関わるシスエレメントが存在するらしい。種子発芽に伴うGUS活性の変化を調べた結果、同じ‐535から‐816の間に種子発芽に伴う遺伝子発現に関わるシスエレメントが存在していることが示唆された。このシスエレメントは子葉と胚軸および胚軸と根の両境界部、子葉の前形成層などでの発現に関与しているらしい。また、‐816から‐1241の間には、発芽後期に主として胚軸中央部で強く発現させるシスエレメントが存在することも示唆された。
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