1.アスコルビン酸ペルオキシダ-ゼ(APX)の葉緑体型とサイトソル型、グアヤコ-ルペルオキシダ-ゼの3者を分別定量する方法を開発して、それらの植物体内での分布、量比を明らかにした。 2.APXによる過酸化水素依存のアスコルビン酸の酸化は、ジチオスレイト-ル、グルタチオンなどのチオ-ルにより阻害された。これらのチオ-ルは、それ自身では酵素を不活化しないが、金属触媒によるチオ-ルの酸化により、過酸化水素が発生する場合や、外部から過酸化水素を添加するとチオ-ルによる酵素の不活化が起こる。チオ-ルはAPXとアスコルビン酸により酸化されたチオ-ルラジカルとなることをESRにより確認した。酵素の反応中心とチオ-ルラジカルとの相互作用により酵素が失活するものと思われる。 3.葉緑体型APXをチャ葉より精製し、リシルエンドペプチダ-ゼで分解し、全体の64%に相当するペプチド断片のアミノ酸配列を決定した。そのうち、一ペプチドのアミノ酸配列は、グアヤコ-ルペルオキシダ-ゼおよびチトクロムcペルオキシダ-ゼのヘムの5番目のリガンドであるプロキシマルヒスチジンを含む領域に対応していた。APX由来ペプチドのアミノ酸配列は、植物のグアヤコ-ルペルオキシダ-ゼよりもむしろ酵母のチトクロムcペルオキシダ-ゼに類似していた。アミノ酸配列の相同性、および酵素学的性質の分析から、過酸化水素の消去に機能しているペルオキシダ-ゼは、電子供与体が異なってはいるが、共通の祖先に由来するものと思われる。 4.ホウレンソウ葉緑体から、従来報告がなかったチラコイド膜結合性APXを発見した。チラコイドとストロマ画分のAPX活性比は1:1であった。
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