研究概要 |
平成2年度(初年度)の研究においては、まず、PCRを応用して、1回のクロ-ニング操作によりタンパク質中の特定アミノ酸残基を全20種類のアミノ酸残基に置換する新しい部位特異的変異導入法を開発した。変異導入の標的部位として,本研究代表者らが先に遺伝子のクロ-ン化と全一次構造の解析を行った好熱性細菌,<Bacillus>___ー sp.YMー2の耐熱性アスパラギン酸トランスアミナ-ゼの補酵素ピリドキサルリン酸結合リジン残基を選び、本酵素遺伝子を含むプラスミドをPCRの鋳型として用いた。4種類のオリゴヌクレオチド(うち2種類は標的リジン残基のコドンがA,G,C,Tの4種類のランダムな塩基となっている)を合成し,これらをプライマ-として2通りのPCRを行った。増幅されたDNA断片を連結して大腸菌に形質転換した結果、約1200個のアンピシリン耐性コロニ-が得られた。イムノブロットで陽性,活性染色で陰性のコロニ-約50個を選び、これらのクロ-ン株からプラスミドを単離して、ジデオキシ法によるシ-ケンス解析を行った結果,標的部位のみがリジン以外の種々のアミノ酸残基のコドンに置換されていることが明らかとなり,本方法が実験計画通りに実施しうることが示された。即ち,本方法は部位特異的変異導入において,1回のクロ-ニング操作で同時に20種類のアミノ酸残基に置換するのに極めて有効な手段である。一方、PCRを利用する新しい遺伝子クロ-ニング法の開発についても,研究を開始し,既に植物UDPーグルコ-ス・ピロホスホリラ-ゼcDNAから,PCRを利用することにより新規制限酵素部位を導入し,本酵素の発現プラスミドを構築することができた。しかし,PCR反応中に目的部位以外の箇所で塩基置換などの変異が起こる場合も観察されたので、今後は、反応条件の改良やプライマ-の特異性をさらに高める工夫を施すことなどにより,これらの問題点を解決したいと考えている。
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