研究概要 |
強いゲル化を起こすポリアクリルアミドを試料とし、系のマクロな性質である力学物性とミクロな分子レベルの性質を反映する光散乱を計測し、ゾル-ゲル転移点近傍における臨界現象の視点から解析を試みた。 ゾル-ゲル転移点近傍の力学物性の変化に関しては、ゲル側の動的弾性率のデ-タのみを用いてゲル化点と臨界指数を決定する方法が一般的であるが、この方法ではゲル化点と臨界指数が同時に、かつ、相互に依存しあって決定されることになる。したがって、厳密に臨界現象を検討するために、ゲル化点と臨界指数を独立に決定する方法を検討した。すなわち、ゲル化点に関してはゾル側の粘性率から決定し、そのゲル化点の値を用いてゲル側の動的弾性率に関して臨界指数を求めた。この方法により得られた動的弾性率に関する臨界指数は1.95となり、パ-コレ-ション・モデルから理論的に予想される値に非常に近い値が得られた。これにより、この方法の有効性が示されたと考えられる。 次に、動的光散乱測定から転移点近傍のゾルでのクラスタ-径分布を求めることを試みた。散乱光強度の時間変化からゆらぎの自己相関関数が求められる。この相関関数から求められる拡散係数から、StokesーEinstein式よりクラスタ-径を算出した。重合反応開始直後クラスタ-径分布にまず単一のピ-クが生じ、反応の進行に伴いさらに大きな第二のピ-クが現れた。第二のピ-クは反応の進行に伴い大きくなるのに対し、第一のピ-クは反応が進行しても大きさはそれほど変わらなかった。この結果から、まず一次クラスタ-が生成し、この一次クラスタ-が重合して二次クラスタ-を形成することが示唆された。これはChhabr et al.(“Kinetics of Aggregation and Gelation,"ed.by F.Family and D.P.Landau,NorthーHolland,Amsterdam,1984)が大規模な計算機シミュレ-ションにより示された動的ゲル化モデルの予測を定性的に支持するものであり、ポリアクリルアミドのゲル化は単純なパ-コレ-ションモデルとは異なるゲル化過程であることが明らかとなった。二次クラスタ-の大きさは、ゲル化点に近づくにつれ発散する傾向を示した。濃度についてスケ-リングすると、ゲル化濃度は粘性率測定から求められた値とほぼ一致し、また臨界指数は0.84となり、パ-コレ-ション・モデルから予想される相関長の臨界指数に近い値が得られた。
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