昨年まで、ゲル化点近傍のゾル中のクラスタ-に関する分子レベルの情報を得るために、動的光散乱測定を試み、 強いゲル化を起こすポリアクリルアミドに関しては重合反応の進行にともない、まず一次クラスタ-が生成し、この一次クラスタ-が重合して二次クラスタ-を形成すること。 二次クラスタ-の大きさは、ゲル化点に近づくにつれ発散する傾向を示し、濃度についてスケ-リングすると臨界指数は0.84と、理論値に近い値となったこと。 を明らかにしてきた。本年は、弱いゲル化を起こすアガロ-スについて動的光散乱測定を試み、ゾル-ゲル転移点近傍における臨界現象の視点から解析を試みた。 非共有結合でクラスタ-を形成するアガロ-スにおいても、動的光散乱法によりゾル中のクラスタ-半径分布を測定することが可能であった。アガロ-スは共有結合による架橋点を形成しないため、本来明確なクラスタ-の定義は困難である。ここで観測されたクラスタ-分布は、からみあいも含んだ非共有結合による架橋点形成により生成したクラスタ-群と考えることもできるが、検討の余地が残されている。クラスタ-に相当する部分の大きさの分布と考えればパ-コレ-ションの考え方が適用できると考えられた。本研究で用いたアガロ-スは45℃のクラスタ-半径分布のデ-タからかなり広い分子量分布をもっていることが示唆された。 平均クラスタ-半径は濃度が増しゲル化濃度に近づくにつれて大きくなり発散する傾向を示した。この発散挙動はスケ-リング則で良好に記述でき、27℃のとき平均クラスタ-半径と濃度のデ-タからfittingによりゲル化濃度と臨界指数を求めると、ゲル化濃度は4.5×10^<‐3>wt%、臨界指数は0.98となり、パ-コレ-ションモデルから予想される相関距離の臨界指数(0.9程度の値が予想されている)に近い値が得られた。 また、温度に関しても、温度が低くゲル化温度に近づくにつれて、クラスタ-半径分布は粒径が大きい方へシフトした。また、分布の形も40.0℃以上の温度条件では大粒径側に長く裾を引いているのに対し、さらに温度が低くなると、裾が消えていることがわかった。濃度0.15wt%のときクラスタ-平均半径と温度のデ-タからfittingによりゲル化温度と臨界指数を求めると、ゲル化温度は32.7℃、臨界指数は1.36となった。推定されたゲル化温度は傾斜法による観察結果とおおむね一致したが、臨界指数に関しては理論値よりもかなり大きな値となった。
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