研究概要 |
1.海洋付着生物の付着忌避物質の化学的研究ムラサキイガイ(Mytilus edulis)の付着忌避試験法を用いて多くの植物から活性成分の単離を行い20数種の活性物質を得た。これらは化学的性質から分類するとフェノール性化合物の多いことが特徴であった。 そこで,単純な構造をもつ市販アルキルフェノール類を用いて,海洋での浸漬試験を行った。アルキルフェノール類では炭素数8〜9,オクチルまたはノニルフェノールが最も活性が高く,4ヵ月以上活性が保持されることが明らかになった。この活性はTBTO(従来のスズを含む防汚剤,毒物)の活性に匹敵するものであり,将来の新規防汚物質を考えるときの基本骨格となることが示唆された。 他方,イガイの付着忌避試験法ではかなり高い活性を示しながら,海洋浸漬試験で全く活性を示さない物質も明らかになった。この原因を明らかにするため,浸漬初期の浸漬板に付着するスライム(微生物と珪藻または微細藻類から構成されている)の防除が防汚活性と高い相関のあることに着目し,スライム中の菌および珪藻を分離した。分離した菌および珪藻さらに標準菌株に対し,防汚効果をもつ物質の杭菌,抗珪藻活性との相関を求めた。その結果,微生物では,Trichophyton menta-grophytes #81028,海洋細菌No.38(グラム陽性)およびBacillussubtilisに対し,抗菌活性を示し,珪藻類では,Nitzschia closter-ium,Naviculla sp.に対して抗珪藻活性を示す物質は防汚活性を示す可能性がきわめて高いことが明きらかになった。 つずいて塗膜面からの活性物質の溶出試験において10日間で80〜90%の残存が必要があることも明らかにした。 以上のように付着忌避物質を防汚物質として用いるための化学的条件および実用化に向けての必要条件を明らかにした。
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