研究概要 |
北海道や長野県等に多く植栽されているカラマツは,造林樹種としての適性は有するものの,材質としては施回木理によるねじれの発生から製材品としては利用がすすんでいない状況にある。この解決策としては集成材やLVL等の再構成材料に加工してエレメント間の抑制作用によって変形をおさえ込むことが考えられる。一方,木構造においては部材間の接合が構造安全性,施工性の向上にきわめて重要なファクタ-となっており,未だ未解決の部分が多い。ここでは,カラマツ材を集成材化することによって利用を促進するとともに,集成材の軸方向に孔をあけておき,ここに長軸ボルトを通しこのボルトで他部材をしめつけで接合を行う新しい木構造の開発を目的とする研究を行う。なお、集成材ではラミナの積層接着時に隙間をあけておくことにより容易にボルト孔(中容部)をつくることができる。 初年度に当る平成2年においては,中空部を有するカラマツ集成材の断面設計およびそれにもとづく大断面材(20×20cm,250m,10プライ)の製造を行うとともに,これらの部材を長平方向に継つぎした長尺梁について接合効率を検討した。まず,ラミナのヤング係数を求めておき,その組み合せによる集成材の曲げ性能のシュミレ-ションを行い,実際に製造したものの測定値と比較を行った。計算値と測定値の適合性はきわめて高かった。ついで軸ボルト4本(断面の4つの角部にとおす)に上って金具をしめつけ,それを介して他部材を継つぎした2本つぎ3本づき(長さ7.5m)の長尺梁材について曲げ試験を行い,その接合効率を検討したが,見かけのヤング係数は単一材よりもむしろ大きくなる傾向が見られた。ボルトのテンションが効くようである。今後時間経過によるボルトのゆるみについての検討が必要であるが,新しい木積造の開発の可能性が十分にあることを認めた。
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