水稲の湛水土壌中直播栽培の、苗立率の向上と安定化を計るため、土質の違いや土壌の硬軟にあまり左右されないで播種深度が一定になる湛水土壌中直播機の開発を行なった。 直播機を設計するに際して特に配慮したのは、次の2点である。 1.播種深度が、1cmにできるだけ近ずくこと。 2.従来播種が不可能であった代かきして間もない(土がいついていない状態)軟らかい水田でも、播種ができること。 そこで、実際の設計や試作にあたっては種子繰出装置を従来の市販機を使用することゝし、種子を直接土中に播種する播種部分について検討することにした。 先ず、従来の播種機の基本的な構造の一部分である作溝器による作溝をとり止め、新しく開発した種子埋設輪で直接種籾を土中へ挿入しながら播種するようにした。 また、土が軟いとフロート底部の種子落下口から泥土がフロート上面まで上昇し、種子導管から落下した種籾が泥土上に滞留したまゝ種子埋設輪で土中に挿入されることなく周囲へ流出する。これを防止し、確実に種子埋設輪で土中に種籾が挿入されるように種子導管とフロートに、新しい機構を取り入れた。 3年間にわたり試行錯誤を繰り返し、土槽や水田での実験を続けた結果、従来機よりも播種深度が安定し、非常に軟らかい土壌状件でも確実に播種が可能な湛水土壌中直播機ができあがった。 今後、この研究の成果が生かされ、湛水土壌中直播栽培の普及が促進され米作の低コスト化につながることを期待している。
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