研究概要 |
ウシ白血病はウシ白血病ウイルス(BLV)感染に起因する腫瘍性疾患である。しかし,発癌はBLV感染牛の1%に過ぎず,その発癌の発生機序に多くの疑問が残されている。発症(白血病化)に至る過程で,一時的な持続性リンパ球増多症(Persistent lymphocytosis:PL)が出現するが,その本態に関しては未だ充分に解明されていない。本研究は前白血病状態として,PLを実験的に誘発し,その本態を細胞病理学的,免疫学的ならびにウイルス学的に解析し,さらに生体内における初期病態を明らかにすることを目的としている。平成2年度においては,ウシ白血病診断液(北里抗原)を用いた寒天ゲル内免疫沈降法(ID)と血液検査でBLV感染PL牛(2頭Nos.1&2)を摘発し,それらウシをdonorとして5頭の子牛(BLV抗体陰性の6〜8ケ月齢;A〜E)に感染実験を行った。donor牛はいずれもX4のBLV抗体価を有し,リンパ球数は12,000で明らかなPLを来していた。免疫学的にそれらリンパ球はBリンパ球の特性を示した。donor No.1の未梢リンパ球を2頭(A&B)に各々9.2×10^8,10^<9.6>,No.2のものを各々3頭(C〜E)に12.6×10^9,6.3×10^8,10^<9.1>ケを静脈内に接種し,BLV抗体価およびリンパ球の動態の経過を観察した。その結果,実験子牛はいずれも表に示す通り5ケ月の観察でBLV抗体価の上昇とPLに発展した。この時点では未だ抗腫瘍関連抗原血清による陽性所見(腫瘍化)を得るに至っていないが,次年度に検討を続行し,初期腫瘍化(血液リンパ球の判断から)時点での体内における病態解析を行う必要がある。
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