研究概要 |
本研究では、プロテインキナ-ゼC(PKC)ファミリ-に焦点をあて、以下の諸点の試験的解析を行なうことを目的とした。1.PKCの分子種特異的活性調節物質の開発。2.分子種特異的活性調節物質のPKCの特異的分子種発現細胞への応用。3.上記細胞系を用いた受容応答機構の解析。 これらの解析を行なうには、PKC各分子種の分離・精製が必須であるが、本研究以前には、α,β,γ種の3種が分離・精製されているだけであった。このため本研究ではまず、これまでにcDNAがクロ-ニングされているPKC分子種の内、まだ組織からの分離に成功していない3つの分子種(δ,ε,ζ)について、酸素の分離・精製と分離された酸素の諸性質の解析を行なった。材料としてはラットの脳を用い、対照としてδ,ε,ζそれぞれのcDNAをCOSー7細胞に導入し発現させたものを用いた。また、酵素蛋白質の同定のため、それぞれの分子種に特異的な抗ペプチド抗体を作成した。その結果、これらの3種のPKCを分離・同定すると共に、種々の活性調節物質による活性化のパタ-ンの違い、基質特異性の違い、蛋白質の組織分布の違い、等を明かにすることができた。さらに、各PKC分子種を介した受容応答機構の解析に向けて2つの方向からのアプロ-チを試みた。1つは酵母の系であり、もう1つはアフリカツメガエル卵母細胞の系である。いずれの系も細胞分裂・細胞周期の制御においてPKCの関与がある程度明かになっている系であるが、これまでに酵素の単離がなされていなかったものである。これらの材料からもPKC分子種を単離し、その性質を明かにすることができたので、今後、酵母や卵母細胞での情報受容応答機構の解析と、細胞分裂・細胞周期の制御におけるPKCの役割の解明に役立つものと思われる。
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