研究概要 |
血清中の抗サイログロブリンIgGの超高感度測定法を実用化するために種々の面から研究を行った。1)研究代表者らが創案した免疫複合体転移測定法を種々改変し、次の高感度で簡便な方法を開発した。2,4ージニトロフェニル(DNP)化サイログロブリン、抗サイログロブリンIgG、酵素標識サイログロブリンの3者を同時に反応させて、形成された免疫複合体を抗DNP抗体不溶化固相上にトラップする。固相を洗浄した後、DNPーLーリジンにより免疫複合体を固相から溶出して(抗ヒトIgGγ鎖)抗体不溶化固相に移しかえ、最後の固相に結合した酵素活性を測定する。2)Nーsulfosuccinimidylー6ー[6ー((2,4ーdinitrophenyl)amino)hexanoylamino]hexanoateを合成し、上記の免疫複合体転移測定法で用いるDNP化サイログロブリンを簡便に調製できるようにした。3)測定を迅速化するため、検出時間の短いeuropium標識をテストした。DNP化europium標識サイログロブリンと血清を反応させ、免疫複合体を抗DNP抗体不溶化固相の上にトラップし、洗浄後、溶出して(抗ヒトIgGγ鎖)抗体不溶化固相の上に移しかえた。測定時間は短縮されたものの、感度と再現性の点で課題を残した。4)1)に記載の方法で血清と過剰のサイログロブリンをあらかじめ反応させても、固相に結合するβーDーガラクトシダ-ゼ活性が充分低下しない場合があり、低濃度の抗サイログロブリン抗体の測定の障害となった。被検血清を遺伝子組みかえ不活性βーDーガラクトシダ-ゼと反応させ、抗βーDーガラクトシダ-ゼ抗体を除去した結果、過剰のサイログロブリンによりバックグラウンドが充分低下し、自己免疫性甲状腺疾患ばかりでなく、健常者の殆どすべてにも抗サイログロブリンIgGが検出されるようになった。したがって、バックグラウンドを低下させるために当初計画した実験の多くは不要となった。
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