本研究の目的はフロ-サイトメトリ-用の重蛍光染色に必要な酵素処理染色などの各段階を温度コントロ-ル、遠心、再浮遊などの全ての処理を含めて完全に自動化した多目的細胞処理装置を開発試作して実用化することにある。平成2年度中に予定通り本装置を試作開発して問題点をチェックし、平成3年度においてその対策を実施して完成させるとともに、実用化のためのソフトウエアを開発した。I.多目的自動細胞処理装置の概要と特色、本装置は(1)液状の検体を納めた検体管を支持した状態で、中心軸を中心として回転するサンプルデスク(2)サンプルデスク上方にあり検体管内に試薬を滴下する分注ノズル(3)サンプルデスク上方にあり検体管の液体の給排を行うための昇降自在なノズルとこのノズルと接続自在な出し入れ容器(4)サンプルデスク下方にあり昇降自在で上昇時に検体管の温度コントロ-ルする温度制御槽および(5)mixing装置から成る。すなわち本装置は複数条件の温度コントロ-ル、遠心、液体の給排と細胞の再浮遊等複雑な一連の細胞処理過程の全てをプリセットした通り自動的に行いうる。本装置はいわば遠心機の“進化"ともいえるもので、高速で回転する遠心のプロセスと、目的とする位置に正確にしかもすばやく静止するプロセスと、いわば“二律背反"のプロセスを完全にコントロ-ルしている。さらに完成した本装置を用いてフロ-サイトメトリ-用の細胞単離法および重蛍光染色法の標準化を計るための至適条件の検討を行い、次の各項についてのソフトウエアを完成させた。(1)末固定組織からの細胞単離、(2)Feulgen染色、DAPI、PIによる定量的DNA染色、(3)抗Brdu(FITC標識)抗体免疫染色とPIによるDNA染色の重蛍光染色、(4)癌細胞診断のためのAcridineOrange蛍光染色、(5)Feulgen加水分解カ-ブ解析。今後は目的に応じた小型化を計りコストダウンを目指したい。
|