研究概要 |
昨年度の成果をふまえ、我々が確立した間接蛍光抗体法(IF)、ラテックス凝集反応(LAT)、およびすでに市販されているDNA-プロ-プ法(DP)を培養菌を用いたモデル実験にて最終比較を行った。又これら3種の方法を実際の臨床検体において比較検討した。 モデル実験においては特異性はいずれも問題はほとんどなかった。最高感度はIF:約2×10^5CFU/ml,LAT:2×10^5CFU/ml,DP:5×10^4CFU/mlであり、DPが最も優れていた。しかしIF,LATの検出する菌体抗原は37℃で数日間安定であり咽頭にて集積効果が期待できるのに対し、DPの検出する菌体リボゾ-ムRNA菌種特異部分は時間単位で分解されることが判明した。 一方実際の臨床検体で検討するため臨床症状よりマイコプラズマ肺炎を疑った患者の咽頭よりスワブにて検体を採取した。多数の検体を集めるべく努力したが、ここ2年は非流行期であったため総計約120例にとどまった。このうち培養でM.pneumoniaeが分離されたものは30例であった。培養陽性例ではIF陽性73%,LAT陽性63%,DP陽性27%であった。このように感度の最もよいDPが臨床検体では最も陽性率が低値であったのは咽頭での検出対象の分解速度が関係していると考えている。又以前より集積例の多いIFでは血中抗体価上昇例72例中85%が陽性であった。今回は血中抗体価を長期に追跡できた症例が少なく、LAT,DPで結果をまとめ得なかったが、血中抗体価上昇例ではLAT,DPでも陽性率は高くなると予想される。 最終的には我々が検討した3方法(ID,LAT,DP)ではIFが最も臨床検体で検出率が高いが、この方法は判定にある程度の習熟をする必要があることなど問題点もある。一方LATは非常に簡便で、臨床検査室で容易に行い得る。又検体処理法の改善で感度上昇の余地があり、このLATの実用化に向けさらに努力したい。
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