前年度ヒトロタウイルス実験感染モデルの作成に成功し、今年度免疫牛初乳による予防とプロテア-ゼ阻害剤による治療を確立した。 1.ロタウイルス免疫牛初乳による予防 妊娠8ヶ月のホルスタイン乳牛にヒトロタウイルスを皮下免疫し出産後、1、2、3日目の初乳を採取した。この初乳を遠心により脂肪分を取り除き、20mlずつ凍結乾燥品としてバイアルに保存した。この牛初乳製剤のヒトロタウイルス血清型4種に対する中和抗体価を測定したところ高い中和抗体価を得ることが出来た。そこでマウスの実験系に50μlの初乳を感染1時間前に投与したところ完全に下痢発症を予防した。次にMO株で免疫した牛初乳(10t3-16)を使って、乳児院にて経口投与によるロタウイルス下痢症の予防実験を行った。牛初乳非投与群では10名中7名が下痢を発症した。一方毎日20mlずつ飲用させた3名は下痢の発症はなく、1日おきに飲用させた3名中1名が発症した。すなわち下痢発症直前から毎日牛初乳を飲用させればロタウイルスによる下痢発症は予防することになる。 2.プロテア-ゼ阻害剤による治療 ロタウイルスは培養液中にトリプシンを添加することにより感染力を持ったウイルスが産生される。そこでプロテア-ゼ阻害剤である合成E-64-cを感染12時間と24時間後の2回投与し、感染2日、3日後の下痢発症状況を調べた。E-64-cは用量依存的に下痢発症を阻害したのに対し、対照溶媒では下痢発症阻害効果は見出されなかった。次に卵白から得たプロテア-ゼ阻害剤であるオボシスタチンと牛膵抽出物でプロテア-ゼ阻害剤あるアプロチニンを同じく感染12時間と24時間後に経口投与したところ両薬剤とも2日目の下痢発症を阻害した。特にオボシスタチン150μgの2回投与では完全に下痢発症を阻害し治療効果が認められた。
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