腎症候性出血熱ウイルスB-1株のMセグメントのクロ-ニングと全塩基配列については昨年報告した。今年は更にSとLセグメントのクロ-ニングと全塩基配列をMセグメントと同様の方法で決定した。 (1)本年は組換えワクチンを作製すべくB-1株のMセグメントをまずワクチニアウイルスへ組込んだ。B-1G1S-Sa1(18/39)、B-1G1L-Sa1(1990/1968)、B-1G2S-Sa1(1975/1994)、B-1G2L-Sa1(3464/3444)の4種類のプライマ-を合成した。これらのプライマ-の5末端にはそれぞれSa1Iリンカ-を予め合成時につないでおいた。G1とG2の両タンパク質を発現させるためにはB-1G1S-Sa1とB-1G2L-Sa1のプライマ-の組合せによりPCRを行った。G1だけの場合はB-1G1S-Sa1とB-1G1L-Sa1、G2だけの場合はB-1G2S-Sa1とB-1G2L-Sa1の組合せで行った。これらのPCR産物をPAK10のSa1I部位に組込み、大腸菌で増幅後、TK細胞に導入し、ワクチニアウイルスを感染させそのウイルスへの組込みを行った。現在この組換ワクチニアウイルスクロ-ンをサザンブロットで解析し更にその中で発現しているものをウェスタンブロッティングで検索中である。 (2)Sセグメントシ-クエンスの結果同じ血清型のSR-11とは98.4%、Hantaan株とは83.2%、Hallnas株とは61.7%のアミノ酸シ-クエンスのホモロジ-を示した。又DNAのホモロジ-からHantaan株からB-1株そしてフレ-ムシフトによりSR-11株に進化したものと考えられる。更に血清型に対して特異的に変位する部位が1内至2ヵ所存在した。Lセグメントの場合Hantaan株とは83.0%、Hallnas株とは73.5%のアミノ酸シ-クエンスのホモロジ-を示した。このことはHantavirusにおいてLセグメントが最も保存されていることを示している。更にRNA依存RNAポリメラ-ゼの活性中心と予測される部位の保存性は非常に高かった。又Lセグメントにおいても血清型に対して特異的に変位する部位の存在が示唆された。
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