研究概要 |
遺伝的多型性に最も富んだHLA抗原のDNAタイピングを法医学領域における個人識別や親子鑑定に応用することは大変有意義である。現在HLAーDNAタイピングは.遺伝子増幅法(PCR:polymerase Chain Reaction)を用いて、増幅した遺伝子をオリゴヌクレチドブロ-ブをもちいてタイピングする方法(PCRーSSO法)と、我々の考察した制限酵素を用いて切断後生じる多型性を調べ遺伝子型を決定するPCRーRFLP法がある。PCRーRFLP法は、アイソト-プや非常に多くのSSOプロ-ブを用いなくて良いため非常に手軽に検査が行える。この方法では、DQAI(8種類)およびDPBI(15種類)の遺伝子型のホモおよびヘテロから成る接合体の型検査が可能であった。このPCRーRFLP法は、ゲル上に観察される近接した断片や、小さな断片を考慮しなければならないので、法医学で得られる試料からは型判定が困難な時がある。そこで今年度は、これらの事を考慮し、新しい方法を考案しDQAI遺伝子8種類、DQBI遺伝子13種類、DRBI遺伝子33種類,DPBI遺伝子19種類についてホモおよびヘテロからなる接合体の型判定を可能にした。この方法は、各遺伝子座のある遺伝子について、有る制限酵素では切断する(Yes)が、それ以外の遺伝子は切断しない(No)制限酵素を用いて、切断パタ-ン(Yes or No)の組み合わせにより型判定を行う方法である。本法を用いて微量血液.毛髪,歯芽などからHLAーDNAタイピングを行ったところ、型判定が可能であった。特に本法では、2年間放置した血液10μlからでも検査が可能であった。また、HLAクラスII抗原については、我々の開発した改良PCRーRFLP法では、各遺伝子座の遺伝子型がPQAIは100%,DQBIは87%,DRBIは94%,およびDPBIは100%で検査が可能となった。
|