研究概要 |
当該年度においてまず多機能デジタル生体顕微鏡の基礎が完成した。まずラット分離潅流肝を用いた微小循環単位の撮像を本システムを用いて行った。細胞内過酸化脂質感受性プロ-ブであるdichlorofluorescin(DCFH)diacetateと,障害細胞の核を染色し赤色蛍光を発するプロ-ブであるpropidium iodide(PI)の2種の蛍光を用い,肝小葉内の酸化ストレスと細胞障害の関係を解析した。多機能デジタル顕微鏡の導入により,2波長の画像を高感度で撮像し,高速処理することが可能となった。また光路変更により,観察蛍光を高速顕微分光することも可能となった(Lab.Invest.64,1991)。本実験系で得られた血流動態のビデオ画像(蛍光標識アルブミン像)から,観察領野の類洞血流速度も,動体解析コンピュ-タ-(Capiflow)により可能となった。従って平成2年度研究実施計画の,multiーgun intravital digital microscopeの開発が予定通り完成し,実用性が確認された。本システムの開発による具体的な実績としては,1.低潅流性虚血性肝障害では肝微小循環単位の中流にあたる門脈終末枝と終末肝細静脈の中間帯で活性酸素が生じ,同部位の細胞壊死を惹起する。2.肝癌培養細胞に対してヒト好中球や,マクロファ-ジが酸化ストレスを及ぼし,障害性を発揮する,ことが挙げられる。また,上記のシステム以外にも,超高感度光子撮像システムと高速ビデオシステムを顕微鏡に装着することにより,ラット腸間膜微小循環系において,1.内毒素血症時には内皮に膠着した顆粒球が実際に生体内で活性酸素を放出する。2.内毒素血症時には内皮ー顆粒球の膠着力が増強し,この反応にはPAFやO_2^-が関与することが明らかにされた(脈管学:1991,印刷中)。従って当初の目標はすべて達成された。
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