研究概要 |
平成2年度で確立された多機能デジタル生体顕微鏡を用いて臓器微小循環における酸素ストレスの動的解析をめざした.以下に本年度の成果を挙げる.1.Capiflowを用いて赤血球,白血球の速度を定量的に解析することが可能となり,虚血ラット肝モデルにおける微小循環障害の動態を明かにすることができた.また,肝硬変患者の爪床を観察し,本疾患における微小循環障害を明かにした.2.典型的な脂質過酸化反応を介した肝障害モデルとされる四塩化炭素(CC14)障害モデルを用いて,hydroperoxide感受性蛍光物質DCFH前処理を施し,DCF蛍光の発生する部位および細胞障害の関連が明かとされた.(Lab Invest 64:167,1991)3.肝臓の低酸素灌流時や急性エタノ-ル投与時に生ずる肝細胞のredox stateを示すNADH蛍光が,肝小葉内で不均一となることが判明し,肝小葉内での微小循環変化と酸素ストレスの分布が解析可能となった.(Adv Exp Med Biol,1991)4.ラット肝分離細胞のうち,異物の排除に重要な働きをするKupffer細胞に注目し,大腸癌の肝転移モデルを作製し,肝臓に流入した大腸癌細胞に対してKupffer細胞が酸素ストレスを介して障害することをin vivoで証明し,さらにin vitroにおいても酸素ストレスを介した細胞障害を視覚化し,半定量化することが可能となった.(Cancer Letters 59:201,1991)また,Kupffer細胞のラット肝癌細胞に対する障害にはnitric oxideが関与することを証明した.(submitted)5.好中球の癌細胞に対する細胞障害性を検討し,ヒト肝癌培養細胞に対する好中球の障害が酸素ストレスを介したものであることを明かとし,癌細胞の発生阻止には早期の障害細胞活性の必要性が考えられた.(Int J Cancer,in press)
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