研究課題
大動脈内に留置可能な超小型タ-ボ型血液ポンプの開発のために、本年度はとくに、ポンプの羽根車の超小型化および高効率化を課題として翼型の設計と製作及びその評価を行った。ポンプ効率の向上には、高速回転に伴って羽根周囲に発生する気泡(キャビテ-ション)の抑制が重要であり、また気泡が消滅する際には高エネルギ-が発生し羽根の破壊の原因となりうることが知られている。血液ポンプの場合は、さらに、溶血など生体組織の損傷を最小限にする必要があるため、血液中での気泡の挙動についての理論的実験的検討を行い、気泡の生成消滅のメカニズムやキャビテ-ションが赤血球に与える影響等について明かにした。これらの知見に基づき、高効率でかつ血液損傷の最少な最適設計条件を得て設計を実行し、切削加工による羽根車の試作を行った。最終的な超小型モデルとしては翼型の直径を6mm程度と想定しているが、加工の可能性および流体力学的評価と改良のため、直径9mm、18mmのやや大型のモデルについても合わせて製作を試みた。この結果、超小型のものについては素材の耐久性や加工器具等の制約から加工過程で破損が生じ、またこれより大きなモデルについても破損を回避するため細部で設計にやや変更を加えたこともあり、模擬循環での評価では理論値通りの十分な流量が得るに至ってはいない。設計や加工法の改良、及び素材の選択に対してさらに検討を行う必要があるものと考えられる。また今後は流れの数値シミュレ-ションなどの方法も採用し、加工の可能性と最適設計条件の双方を満足するものを製作する方針である。
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