平成4年度には以下の研究を行った。 1.自動駆動装置の性能試験:初年度にアイシン・ヒューマン・システムズ社に依頼し、製作した自動駆動装置の性能・耐久性・安全性の確認を引き続いて行った。その結果、この装置は全ての面において完成度が高く、安全に臨床例に使用可能であるとの結論を得た。 2.新生児呼吸不全の治療:泉工医科工業社に依頼し、製作した新生児用血液ポンプに市販膜型人工肺(MeraSilox0.5)を組み合わせた新しいExtracorporeal Membrane Oxygenation(ECMO)回路を用い、更に2例の新生児呼吸不全患者の治療を行った。第2例は平成4年6月25日、胎児循環及び羊水吸引症候群による呼吸不全の診断紹介された生後32時間の新生児である。自動血液ポンプを用いたECMO治療は成功するかにみえたが、95時間目に大血管転位症と診断され、ECMOを離脱後他院へ紹介されたが、死亡した。自動血液ポンプは運転開始時にセンサー不良のため交換を要したことを除けば149時間40分の経過中順調に作動した。第3例は平成5年3月8日に出生した先天性横隔膜ヘルニア症例で、生後3時間で手術を施行、術後直ちにECMO治療を開始した。血液ガスはECMOにより急速に改善したものの酸血症と低血圧状態が遷延し、ECMO開始後26時間に末梢循環不全のため死亡した。二つの血液ポンプの一方の機能にやや問題が認められたが、血液ガス所見からはECMOの肺補助効果は十分であった。 3.肝を生体内に置いたまま下大静脈から肝静脈血を回収し、人工肺で酸素化した後、門脈から送血する肝分離潅流に本血液ポンプを用い、最適潅流量を知る実験を行った。 4.新型血液ポンプの試作:これまでの実験及び臨床使用の結果、泉工医科工業社製のシリコン・サック型血液ポンプには限界があることが明かとなッたので、アイシン・ヒューマン・システムズ社に依頼し、polyurethan製チューブ型血液ポンプの試作を開始した。センサーも可視光線を利用するものに変更した。この新型ポンプは有望である。
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