研究概要 |
本研究は、成人用空気駆動血液ポンプを小型化し、小児用多目的血液ポンプ及び自動駆動装置を開発し、その性能、安全性、耐久性などを実験で確認し、最終的には人体に用いることを目的として始められた。 平成2年度には主として自動駆動装置の開発を行い、アイシン・ヒューマン・システムズ社に依頼・製作された装置のテストを行った。この装置の性能および耐久性は高い完成度を示した。その後2年間の実験でも期待通りの優れた性能が確認された。即ち、ポンプへ流入する血液量に自動的に対応して拍出量が変化する機能、流出側の抵抗が増加しても自動的に空気圧と駆動数が変化して拍出量を維持する機能、更に流出側の極端な抵抗の増加に対しては自動的に駆動を停止し、回路の安全性を保つ機能が確認された。 平成3,4年度には、この多目的血液ポンプと膜型人工肺を組み合わせたExtracorporeal membrane oxygenation(ECMO)実験を行い、ECMO中の循環動態ことに冠動脈血流量の変化について研究した。高流量時には冠動脈血流は減少するという興味ある結果を得、その原因について研究を続行中である。また、この血液ポンプを用いて肝臓を全身の循環から分離して灌流する研究を実施した。この方法は悪性腫瘍の化学療法や温熱療法、肝臓手術などに応用が可能である。 この研究期間中に3例の新生児にECMO治療を実施した。疾患が重症であったため救命例を得ることはできなかったが、この自動血液ポンプを用いることにより、ECMO治療はより安全で操作の簡便さとあいまって、従来のローラー・ポンプ式のECMOに比べて著しく省力化が可能であることを明らかにできた。今後この血液ポンプが量産され、誰でも入手できるようになれば、多くの新生児呼吸不全患者が救命されるものと思う。泉工医科工業製の血液ポンプに代えて、医用polyurethanを用いたチューブ型の血液室を持った新型血液ポンプの開発に着手した。 この新型血液ポンプはHall IC-磁石センサーの代わりに可視光センサーを用いており、制御はより正確となった。今後の研究の一方向として、重症患者の搬送中にも使用できる駆動制御装置を開発たい。
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