研究課題
1.昨年度の成果を踏まえ、人工椎間板の形状設計を行った。屍体標本および外来患者のX線写真とCT写真を用いてL4/5椎間板の形状を調査した。手術時の安全性や扱い易さ、また製造の容易さを考慮して、厚さ3mmの生体活性なA-Wガラスセラミック製の半円形プレ-トの間に厚さ8mmの生体適合性高分子材料を挟んだ形状とした。2.1.で決定した形状を基に、人工椎間板の構造設計を行った。屍体実験より得られた剛性目標値を満足するように、プレ-トに挟まれたエラストマ-の構造と材料を三次元有限要素法を用いて検討した。その結果、エラストマ-は中央を空洞とした厚さ10mmのリング状で、さらにその最外周部を厚さ1.25mmのスキン層とした構造とし、また内層材料のヤング率が1.0MPa、ポアソン比0.1、スキン部がヤング率14.0MPa、ポアソン比0.4の材料の時に目標剛性値を満足させることができた。3.人工椎間板設計のための基礎デ-タの充実のために、ヒト新鮮屍体から採取した10個のL4-5腰椎機能単位を用いて、生理的範囲内と思われる繰り返し負荷(圧縮-引張、ねじり)中の力学的特性を調査した。その結果、後方要素の状態に関わらず、いずれの負荷でも変位が大きいほど荷重はもちろん剛性値も有意に増加した。また、全後方要素は圧縮剛性の24〜30%、引張剛性の21〜26%、ねじり剛性の42〜54%程度に関与し、その効果は圧縮・引張では低変形領域ほど大きく、ねじりでは逆に高変形領域ほど有意に大きかった。圧縮剛性とねじり剛性には椎間関節が、引張剛性には棘上・棘間靭帯が有意に関与していた。4.3.と同様の目的で、ヒト新鮮屍体から採取した10個のL4/5 disc-body unitを用いて、生理的範囲内と思われる繰り返し負荷(圧縮-引張、ねじり)中のL4/5椎間板の力学的特性と髄核の効果について調査した。髄核はL4/5椎間板の圧縮・引張・ねじり各剛性に有意の効果を持っていた。
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