研究分担者 |
飯島 智彦 住友セメント株式会社, 中央研究所, 研究員
奥 隆司 住友セメント株式会社, 中央研究所, 主任研究員
君島 健之 住友セメント株式会社, 中央研究所, 主任研究員
塩田 雄治 住友セメント株式会社, 中央研究所, 所長
後藤 八郎 横浜市立大学, 整形外科, 助手 (50234993)
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研究概要 |
今年度は,合成ハイドロキシアパタイト熱分解産物の骨セメントとしての応用,可能性を探るために,骨髄内および軟部組織内における力学的強度,毒性実験(投与量と各臓器におよぼす影響)について実験を施行した。 1,力学的強度について 日本白色家兎60羽の大腿骨をリ-ミングの後,アパタイトセメントおよび対照としてPMMAセメントを注入し,術後3日,1週,4週,8週,12週で各6羽ずつ屠殺し。大腿骨を摘出し内部の硬化物を3mmφX3mmの円柱状に採型し力学試験機(島津オ-トグラフAG500A)にてクロスヘッド速度1mm/minで荷重を加えて圧縮強度および押し出し強度を測定した。また周囲の骨との反応を観察した。アパタイトセメントの圧縮強度は術後4週で平均50MPa以上に達し以後維持された。これはPMMAセメントの約60〜70%の強度だった。また,押し出し強度は経過中,PMMAセメントに比べて有意に大きかった。さらにアパタイトセメントの周囲には炎症反応の所見なく,新生骨が形成され,アパタイトセメントとその新生骨は介在組織なしに,直接,接していた。したがってアパタイトセメントは組織学的に生体親和性を有するだけでなく,力学特性の面からも自己硬化型生体材料(いわゆる骨セメント)として十分に有用であると考察された。 2,毒性試験について 生後6週齢のラット30匹の皮下組織内にアパタイトセメント0.3gをエ-テル麻酔下に注入した。注入前・注入後1週,2週,4週で血液・生化学検査を施行し,短期の毒性及び軟部組織との反応を検討した。注入後は白血球の軽度増加および軽度の炎症反応を認めたものの,組織学的に明らかな炎症所見はなかった。また,屠殺後,主要臓器に関しては,炎症所見および異常所見は認めなかった。今後は,アパタイトセメントを長期に注入したあとの長期毒性・耐久性についてさらなる検討が必要と思われた。
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