研究課題
試験研究(B)
合成ハイドロキシアパタイト(HAp)の熱分解産物を水と混和すると泥状となった後硬化し再び純粋なHAPを生ずる。これをアパタイトセメントと呼んでいるが、この新しい自己硬化型材料の骨親和性、力学的強度、生体内毒性試験、および閉経後モデル動物生体内における組織親和性について調査検討した。(1)家兎大腿骨内に注入し経時的にX線像、非脱灰組織標本像により親和性を評価した。注入後2、4、9週ではアパタイトセメントは一塊となっており、X線回折でHApであることを確認した。2週で既に周囲に新生骨の形成が起こっており、骨とHApの界面をSEM像で観察すると介在物は存在しなかった。この傾向は観察期間中見られ、良好な骨親和性が認められた。(2)次に同様にして大腿骨内にアパタイトセメントを注入し3日、1、4、8、週後の力学的強度を測定した。大腿骨を円柱状に採型し圧縮強度、押し出し強度を測定した。圧縮強度は4週後で50MPa以上とPMMAセメントの約70%を示し、押し出し強度はPMMAセメントを凌いでおり、力学特性の面でも実用性が証明された。(3)臨床応用に係わる生体内安全性の検討を行った。急性毒性試験として、アパタイトセメント抽出液をラット静脈内に注射し状態を観察した。亜急性毒性試験としてラット皮下、腹腔内、筋肉内埋入後、1、2、4週で屠殺し全身状態、血液生化学所見、埋入部位組織像を評価した。慢性毒性試験として、家兎大腿骨内に注入し26週、52週で屠殺し短期試験と同様の検討を行った。いずれの毒性試験でも毒性の所見はみられなかった。(4)骨粗鬆症モデルラット大腿骨内注入実験では、新生骨形成が対照群では4週から見れていたのに対して、8週後からと遅かったが、経時的に新生骨面積は漸増し、良好な骨伝導能を有していた。以上よりアパタイトセメントは有望な自己硬化型材料であり将来の臨床応用に期待ができると考察された。
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