研究概要 |
今年度は主として生体組織(特に脳)を対象として,レ-ザ-光照射によって励起される自家蛍光の測定を行い,その特性の検索と脳虚血におけるスペクトル変化について検討を行った。ラットをペントバルビタ-ル麻酔下に開頭して色素レ-ザ-発振装置により得られた波長363nmまたは451nmのレ-ザ-光で脳表面を照射した。照射部位近傍に外径1.4mmの微小内視鏡先端を配置して集光し,マルチフォトダイオ-ドスペクトルアナライザ-で蛍光スペクトルとおよその蛍光寿命を測定した。波長363nmで照射すると440nm付近に極大を持つ蛍光スペクトルが得られ,その蛍光寿命は数十ナノ秒以下であることがわかった。ラットの脱血し血圧を40mmHg程度にしても蛍光スペクトルは変化しなかったが,さらに総頚動脈両側結紮により470nmに極大を持つ蛍光が観察され,結紮を解除して血流を再開するとこのピ-クは消失した。この脳虚血時のピ-クがどのような物質に起因するものかはは現在分析中であるが,嫌気性条件下でのNAD(P)Hの増加によるものと考えられる。波長451nmで照射すると505nm付近に極大を持つ蛍光スペクトルが得られ,この蛍光寿命も数十ナノ秒以下であることがわかった。ラットを脱血し血圧を40mmHg程度にすると600nmに極大を持つ蛍光が観察され,還血するとこのピ-クは消失した。このピ-クについてはフランビン系化合物とは蛍光スペクトルが異なっており,現在その蛍光物質を分析中である。なお,451nmでの照射と測光については既に我々が開発した微小内視鏡のファイバ-スコ-プをそのまま利用することができた。以上の結果をもとに,脳内の蛍光物質の同定と虚血等によるその変動,並びに,照射と測光に用いるファイバ-スコ-プの材質とさらに微小化するための方法についての検索を進める予定である。
|