研究概要 |
平成2年度には、2つの加温方法を眼科領域に導入することを目標に研究を進めた。その加温方法とは、ひとつは、RF(radiofrequency)を利用するもので、眼球全体をできるだけ均一に加温することを目標としている。家兎眼様のRF電極を設計し、温度負荷をかけた状態での眼内の温度分布を測定、網膜に対する温度負荷による障害の有無を検討した。さらに、網膜剥離の一番重篤な合併症である、増殖性硝子体網膜症の治療にこのRFによる温熱療法が使用できるのではないかと考え、家兎眼に家兎皮膚線維芽細胞を注入して増殖性硝子体網膜症モデルを作製し、RF温熱療法を行った。その結果、線維芽細胞注入後2時間以内に網膜面で30分間、約41.4℃になるように温度負荷をかけると、続発する牽引性網膜剥離の発症を有意に抑制させることが分かった。一方、網膜のパッカ-形成は、このRF温熱療法では、有意に抑制されなかった(Yoshimura,N et al.Invest Ophthalmol Vis Sci,in press)。現在、さらに小さな電極を作製中であり、RF温熱療法でも眼内の局所の温度負荷をかけられるような装置の開発を目指している。もう一つの加温方法は、強磁性結晶化ガラスを発熱体とする方法である。マグネタイト、カルシウムシリケイトを主成分とするセラミクスを交流磁場下に置くと、ヒステリシス損により発熱する特徴を持っている。この加温方法を採用すると、眼内の局所の加温が可能となる事が予想される。このセラミクスをコンタクトンズ型に成形し、寒天ファントムを使用して、発熱特性、設定条件を検討した。また、家兎眼強膜に縫着し、眼内の温度上昇、分布についても検討した。その結果、このセラミクスは、十分眼科領域における温熱療法に使用できることが分かった。 今後、家兎眼に移植したメラノ-マ細胞の実験的治療に応用しようと考えている。
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