研究概要 |
平成2年6月に今年度分の補助金の交付を受け,ただちに実験を開始した。 はじめに,申請者の講座で開発した直径0.1mmの炭化タングステン線による針を作製した。まず,微細解剖の結果生じる組織破片の除去法について,再度詳細に検討した。以前から当教室で行っている予備実験によれば,解剖針先端と試料破片を軽く接触させた状態で,直流を通電すると,試料表面上の組織小片が飛散し,この結果この試料小片を試料表面から視野外に除去され得ることがわかっている。しかし,解剖器具先端と試料破片の接触状態により,失敗することも多かったので,作業の能率化のために,適当な条件を見つけることを試みた。 その結果,通電の際の電流強度,電圧の最適条件の設定が以外と困難であることがわかった。すなわち,最初試みていた電圧が低すぎたこと、および,最適電圧の幅が狭いため,除去できる組織破片の大きさに,当初は限界があった。また,以前から経験していたことではあったが,器具先端と組織破片の接触条件が,破片の形状,大きさならびに器具先端との位置的関係等,微妙な調節を個々に必要とする点も,この条件の設定を困難にした。器具先端と試料表面との距離が適当でないと,試料そのものを障害してしまうことがあった。 以上のように,組織破片の除去のためには,さまざまな交錯する条件が介在し,一定の最適条件を設定することができなかった。 しかしながら,一般には,組織破片と先端器具との間に,約90Vの直流を通電すると,組織小片の飛散除去が行なえた。組織小片と器具先端との接解条件は,きわめて微妙で,相当の熟練を要することも明らかになった。
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