研究概要 |
前年度のシステムを改良し、人体、顎顔面部形態の3次元的計測を可能とした。平成2年度に継続して、白黒の格子パタ-ンを用いる方法が有効であり、顎顔面部への応用に十分な性能を有していると結論ずけ、今年度はその結論に基ずいて顔面の2方向から1度に測定する実用システムを設計製作した。この計測システムは、解像度512×240の画像フレ-ムメモリとグレイコ-ドパタ-ンを投影するための液晶パネル,オ-バ-ヘッドプロジェクタ-,CCDテレビカメラ2台,さらにパ-ソナルコンピュ-タ(NEC PC-9801RA)により構成されている。 近年、医学や歯学の分野において、非接触式の3次元形状計測の必要性が認識され、高速化、高精度化をめざす取り組みが数多く報告されている。特に、矯正歯科において、従来、顎部の手術を行う際、その形態が手術前後においてどのように変化するかを主観的にしか判断できなかった。そこで、顎部の形態変化を定量的に表すために高速、高精度かつ安全な3次元計測が要望されている。本研究では、人体頭部の3次元形状を計測するために符号付きパタ-ン投影法に基づく3次元形状計測システムを製作し、実際に計測を行い得られた3次元形状デ-タのデ-タ処理手法に関して検討を行った。このシステムの特徴は、符号付きパタ-ンを投影するために液晶パネルを用いていることと、不可視領域を減らすために2方向からパタ-ンを投影し計測を行っていることである。以前に当研究室で開発した光切断法に基づく人体計測システムに比べ、機械的可動部が少なくなり、精度と安全性を向上できた。デ-タ処理については、2つのテレビカメラからのデ-タを整合性よく合成する必要があったが、独自のアルゴリズムの採用で解決できた。また、測定された3次元形状デ-タから自然な顔画像を再現する方式について検討を行い、計測時に顔面部の濃淡情報を取り込んでおき、その情報に基づいて再生する顔部を構成するポリゴンの濃淡を定めることにより、極めて自然な顔画像の再生ができることを確認した。また、本手法の採用によりデ-タ量の圧縮にも成功し、以前より少ないデ-タ量で精度の変わらない表示が得られるようになった。本手法は、矯正歯科分野での顎の変形シミュレ-ションやテレビ電話などに応用できる可能性を有しており、来年度以降の研究に期待したい。
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