血管性痴呆に伴う脳機能低下を防止する薬物の開発

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02557091
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 室田 誠逸 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (50072989)
• 研究分担者: 岩野 政雄 三菱化成(株), 医薬開発部, 部員 ; 石崎 泰樹 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (90183003) ; 森田 育男 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教授 (60100129)
• キーワード: 神経細胞 / 海馬領域 / 過酸化脂質 / グルタチオン / グルタミン酸 / 神経細胞障害

研究概要

細胞は虚血にたいして長時間耐えることができない。脳においては、学習、記憶をつかさどる海馬領域の神経細胞が、虚血に対して特に脆弱であることが知られている。この脆弱性が何に起因するものであるかは明らかにされていないが、虚血自体よりも虚血後の再潅流時に生成する過酸化脂質による細胞障害説が提唱されている。初年度は過酸化脂質である15-HPETEの培養神経細胞に対する毒性、還元型グルタチオン、エブセレンによる予防効果を報告した。さらに興奮性アミノ酸であるグルタミン酸による細胞障害について調べた。しかしながら、これらは全て突起断裂、細胞体膨張といった形態学的な評価方法で行ったものであり、定量的な判定法ではなかった。そこで、本年度は、形態学的な評価法のほかにトリパンブル-を用いた色素排除法、培養液中へ漏出する酵素活性測定法を検討したが、それぞれ精度、再取性、感度等の点で問題があった。そこで、蛍光試薬を用い、画像解析で神経細胞の生死判定系を確立することを試みた。生細胞がfluorescein diacetate(FDA)、死細胞がpropidium iodide(PI)に染色される性質、および同一レ-ザ-励起下でも両試薬の蛍光波長の違いを利用し、生細胞、死細胞の同時定量法を確立した。定量は、画像解析装置付き蛍光顕微鏡(ACAS570)を用いて行った。この方法の利点としては、数分以内に細胞の正確な生死判定ができ、さらに画像解析により両者の比率が算出可能であることがあげられる。一方、種々の刺激剤による細胞死の機構の1つとして、過酸化脂質が考えられているが、この装置を用いることにより、その定量も可能となった。今後、この系を用いて各種薬物のグルタミン酸による毒性に対する効果を検討すると共にその際の過酸化脂質生成、細胞内カルシュウムの変化等を調べ、グルタミン酸の毒性の機序解明とその保護効果をもつ薬物の検索を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] S.YOSHIMOTO,Y.ISHIZAKI,T.SASAKI and S.MUROTA: "Effect of carbon dioxide and oxygen on endothelin production by cultured cerebral endothelial cells" STROKE.22. 378-383 (1991)
• [文献書誌] S.YOSHIMOTO,Y.ISHIZAKI,A.MORI,T.SASAKI,K.TAKAKURA and S.MUROTA: "The role of cerebral microvessel endothelium in regulation of cerebral blood flow through production of endothelin-1" J.CARDIOVAS.PHARMACOL.17. S259-262 (1991)
• [文献書誌] Y.ISHIZAKI,L.MA,I.MORITA and S.MUROTA: "Astrocytes are responsive to endothelium-derived relaxing factor(EDRF)" NEUROSCI.LETTERS,. 125. 29-30 (1991)
• [文献書誌] H.FUJITA,I.MORITA,and S.MUROTA: "Involvement of adhesion molecules (CD11a-ICAM-1) in vascular endothelial cell injury elicited by PMA-stimulated neutrophils" BIOCHEM.BIOPHYS.RES.COMMUM.,. 177. 664-672 (1991)
• [文献書誌] L.MA,Y.ISHZAKI,I.MORITA and S.MUROTA: "Presence of nitric oxide synthase activity in the neurons of the rat embryonal cerebrum" NEUROSCI.LETTERS,. 132. 23-25 (1991)
• [文献書誌] Y.ISHIZAKI and S.MUROTA: "Arachidonic acid metabolism in cultured astrocytes:presence of 12-1ipoxygenase activity in the intact cells" NEUROSCI.LETTERS,. 131. 149-152 (1991)
• [文献書誌] H.OCHI,I.MORITA and S.MUROTA: "Protective effect of several drugs on endothelial cell injury induced by 15-HPETE,an arachidonate lipoxygenase product" CYTOPROTECTION AND CYTOBIOLOGY,(1991)
• [文献書誌] I.MORITA,H.OCHI and S.MUROTA: "Cytoprotective effects of glutathione and glutathione peroxidase on endothelial cell injiry induced by lipid peroxydation" Proceedings of International Society for Free Radical Research 5th Biennial Meeting,(1991)