研究概要 |
ス-パ-オキサイドディスムタ-ゼ(SOD)は、活性酸素を消去する酵素で、虚血、炎症、癌化などの病態に関与していると考えられている。我々は、SODのうちミトコンドリアに局在するMnーSODに着目し、急性心筋梗塞患者血清中のMnーSODをモノクロ-ナル抗体を用いたELISAにて測定した。その結果、発症後、血清中MnーSODは2相性の上昇を示し、特にその後半の上昇は、平均108時間と他の逸脱酵素に比し極めて遅く、かつその最高値は心機能と負の相関を認めた。そこで、このMnーSODの発現の機作と病態的役割について、サイトカイン(TNF)との関連より検討した。急性心筋梗塞患者中のTNFをRIAで測定したところ、150〜220pg/ml(正常値40pg/ml以下)と上昇していた。ヒト培養細胞系にTNFを投与し、MnーSOD、Cu,ZnーSODの定量を行ったところ、TNFに対して抵抗性であるWIー38、Aー549などではMnーSODの著しい発現を認め、一方、Cu,ZnーSODは変化がなかった。次いで、ラットにおけるMnーSODに検討するため、TNFを10μg腹腔内に投与し、組織中のMnーSOD含量を検討したところ、心臓、肝臓などで増加が認められた。次いで、ラット心筋細胞培養系にTNF100ng/mlの濃度で投与したところ、細胞中MnーSOD濃度は40%の増加を認めた。このラット心筋細胞に対して、低酸素(90分)ー再酸素化(90分)の負荷を与えて、細胞障害指標として上清中のCPK活性を測定した。その結果、コントロ-ル群に比し、TNF群では有意にCPKの逸脱がおさえられた。このように、心筋においてもTNFによるMnーSODの誘導は認られ、TNFによる心筋細胞保護作用が観察された。
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