研究課題/領域番号 |
02557097
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷口 直之 大阪大学, 医学部, 教授 (90002188)
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研究分担者 |
宇田 泰三 宇部興産, 研究所, 主任研究員
多田 道彦 大阪大学, 医学部, 教授 (90093434)
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キーワード | ス-パ-オキサイドディマムタ-ゼ / 酵素免疫測定法 / 心筋障害 / 急性心筋梗塞 / 心機能 / 腫瘍壊死因子 |
研究概要 |
本年度は昨年度までに明らかにした急性心筋梗塞患者血清中のMn-SODの上昇について、メカニズムを細胞傷害の見地から検討を加えた。急性心筋梗塞患者血清中のMn-SODを経時的に測定すると再潅流成功例、不成功例のいづれにおいても24時間以内の小さな上昇と100時間前後に最高値を持つ大きな上昇の二相性を示すことが特徴的である。特に後半の上昇は他のCPK、GOTなどの逸脱酵素に比し極めて遅く、Mn-SODの分子量や細胞内局在及び血中消失速度を考慮しても単なる逸脱とは考えにくい。またその最高値は心機能(左心室造影より求めた左室駆出率)と負の相関関係にあった。 Mn-SODはミトコンドリアに局在し、腫瘍壊死因子(TNF)をはじめとするサイトカインにより誘導されることが知られている。急性心筋梗塞患者血漿中のTNFを経時的に測定するとMn-SODの約1病日前に上昇していた。即ち、心筋梗塞巣に集まるマクロファ-ジや好中球などの細胞よりTNFをはじめとするサイトカインが放出され、それが付近の細胞のMn-SOD合成を高め、虚血により傷害された細胞膜より遅れて漏れ出てきている可能性がある。このことは梗塞巣の炎症の程度が大きいほどMn-SODの増加が大きいことを意味しており、Mn-SODの後半の上昇の最高値が梗塞量とおおよそ相関することと合致する。 このようにMn-SODはCPKなどの従来の指標とことなり、心筋障害の新しい概念のモニタリングとなる可能性が示された。またその遅い出現は梗塞発症後時間の経過した心筋梗塞の診断にも有用であると考えられた。
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