研究概要 |
結核をはじめとする抗酸菌感染症は診断確定に長い時間を要することが臨床検査上大きな問題となっている。とくに最近外国人労働者の流入、若年者層における既感染率の低下による集団感染の増加などから新しい抗酸菌感染症の診断法の開発が求められている。我々はこの問題をポリメレ-ス・チェイン・リアクション(PCR)を用いて解決することを試みている。本年度は結核菌の19kDa抗原遺伝子より結核菌に特異的なPCRプライマ-を、そしてdnaJ遺伝子より抗酸菌全体を広く認識するプライマ-を開発した。前者は結核菌の確定診断に、後者は抗酸菌の存在を一次スクリ-ニングするのに用いることが可能である。次にわれわれはdnaJ遺伝子に対するPCRで増副される各種抗酸菌の当該遺伝子の塩基配列を決定し、制限酵素切断地図の比較を行った。その結果、SmaI,NaeI,HinfI,FokI等の制限酵素をPCR産物に加えることにより、各抗酸菌種に特異的な切断パタ-ン(RFLP)を得ることができた。このことはdnaJ遺伝子のPCRによって抗酸菌の存在を確認し、次で適当な制限酵素を用いて切断すれば、菌種同定が可能であることを示している。 臨床検体からの抗酸菌DNAの検出についても痰、腹水を用いることが可能であることが示された。しかし培養陰性ながらPCR陽性を示した症例が真に抗酸菌感染症であるか否かについては、今後症例を重ねて検討する必要がある。
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