研究課題
試験研究(B)
われわれが作成したヒト活性化血小板に特異的に結合するモノクロ-ナル抗体2T60の対応抗原は、血小板のα顆粒膜のGMPー140(PADGEM)であり、本抗体はまた活性化家兎血小板に対しても反応し、家兎血小板α顆粒膜のGMPー140類似の膜糖蛋白を認識する。2T60抗体を結合しうる血小板(2T60陽性血小板)は体外循環中に有意に増加することを解明し、血栓形成傾向の指標とされる流血中の活性化血小板を2T60陽性血小板として把握しうる成績を得た。すなわち、本抗体は血栓症の診断に対し有力な方法を提供するものである。2T60抗体をUrokinase(UK)で免疫したマウス脾細胞と融合して、GMPー140とUKの双方に二重特異性のモノクロ-ナル抗体UP4ー33の作成に成功した。UP4ー33をあらかじめ等モル比のUKと結合されて使用すると、活性化血小板の存在する凝血塊では、UK単独の使用時に比し、強力な線溶活性の亢進が見られ、これはUP4ー33抗体の活性化血小板へのtargettingによるUKの集中が生じたためと考られた。またUP4ー33抗体とUKを同時に添加することにより、UKのみの添加に比して多血小板血漿のADPによる凝集、あるいは洗浄血小板のトロンビンによる凝集の解離を有意に促進した。一方、in vivoの実験系ではすでに開発した家兎の内頚動脈にアラキドン酸を注入して中大脳動脈領域に血栓を形成する実験系で、あらかじめUP4ー33抗体をUKを混合して全身投与しておくと、対照のUK単独投与群に比し、該領域における血液のextravasationが有意に(p<0.05)抑制された。このことは血栓部位に取り込まれた活性化血小板に、UP4ー33結合したUKが抗体のtargetting作用により集中した結果であると考えられた。すなわち、UP4ー33抗体は活性化血小板を含む血栓に集中することが可能であり、もしUKを結合しておれば、血栓部位で強力な血栓融解作用を生じ、治療効果をもたらしうるように期待される。
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