本研究は、本研究代表者らが従来行ってきた自動印鑑照合方式の研究成果をもとにして、被検印影各部の品質をあらかじめ識別し、その結果に基づいて照合対象領域を適応的に制御できる照合方式を開発することを目的としている。平成2年度は2年計画の初年度として、当初計画に基づき研究を行い、以下の成果を得た。 1.被照合印影の品質評価法に関して、印影画像の品質(鮮明・不鮮明)は、その濃度ヒストグラムの差となって現れるという特性を利用した方法を開発した。すなわち印影画像を適当な大きさの部分画像に分割し、各部分画像の濃度ヒストグラムをもとにして、領域内の画素を文字部と背景部に分離したとき、ヒストグラムの分離性の大きさを評価量として品質識別を行う方式である。種々の品質の印影画像を用いて識別実験を行ったところ、本手法は熟練者の主観評価の結果とほぼ一致する結果を与えることを確認した。 2.従来本研究代表者らが開発した自動照合方式に、本研究で開発した品質評価機能を付加して、印影の品質評価機能を有する自動照合方式のシミュレ-ション・システムを開発した。そして、本照合方式と従来の照合方式による照合実験を行い、本方式は従来方式と比較して優れた照合性能を有することが期待できるという結果を得た。しかし実験に用いた印影デ-タが少数であるため、厳密な照合特性の比較は今後の課題である。 3.パ-ソナルコンピュ-タと高速画像処理ボ-ドからなる小形印鑑照合装置を構築し、本装置に上記の照合方式をインプリメントするための高速化アルゴリズムについて検討した。そして印鑑登録システム部を本装置にインプリメントし、主として処理時間について検討した。その結果、登録処理に要する時間は、6秒/件と実用的にも十分な性能であることを確認した。
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