研究概要 |
1986年に我々はニジマス魚卵ポリシアロ糖タンパク質分子中に新しい単糖残基デアミノノイラミン酸(KDN)の存在を見出した。以後、1992年に至るまでKDNにまつわる研究成果が国内外から報告された。本試験研究では、今後多くの生物種に見出される可能性があるKDN含有複合糖質の微量検出プローブの開発を目指した研究を行ってきた。その結果平成4年度に得られた実績について概要を述べる。 (1)極微量KDN糖鎖検出のための抗KDN単クローン抗体の産生:-我々が進めて見出し、報告した[J.Biol.Chem.(1991)266,21929]KDN-ガングリオシドの第1例であるKDNα2→3Galβ1→4Glcβ1→ceramideを抗原としKDNα2→3Galβ1→エピトープ構造に特異的な単クローン抗体(IgG)の産生に成功し、mAb.kdn3Gと命名した[Glycobiology vol.3,印刷中]。また、KDN含量が重量で>50%で、その殆どがα2→8-結合オリゴ・ポリKDN構造である糖タンパク質KDN-gpを抗原として使用し、(→8KDNα2→)_2配列に特異的な単クローン抗体を調製し、mAb.kdn8kdnと命名した[投稿準備中]。 (2)抗-KDN抗体を用いた研究例:-(a)単クローン抗体mAb.kdn3Gを利用し、ニジマス雌体腔液中に数種類の抗体陽性なガングリオシド成分を見出し、その内の主要な2種の分子を単離精製し、正確な構造を(KDN)GDlaおよび(AcKDN)GDlaと決定した。[J.Biol.Chem.に投稿中]。 (b)mAb.kdn3GとFITC-標識したヤギ抗マウスIgG抗体を用い、固定化ニジマス精子試料とインキュベート後蛍光顕微鏡下で調べ、(KDN)GM3ガングリオシドの精子表面の局在を決定した。 (3)KDNの化学的微量検出法の確立:-オリゴ・ポリKDN構造の微量化学分析法の一環として、タイプを異にするオリゴ・ポリシア酸を対象として ^3H-標識した後HPLCで分離後、液体シンチレーション法で検出・同定するシステムならびにオリゴ・ポリシアル酸およびオリゴ・ポリKDN-糖タンパク質のセチルピリジニウム塩形成による選択的沈殿法を用いた微量精製法を開発した[Analytical Biochemistry(1992)202,25-34;Analytical Biochemistry(1992)205,244-250]。
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