生体分子相互作用系観察のための走査型トンネル顕微鏡の試作と生体試料調製法の開発

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02558015
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 猪飼 篤 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (50011713)
• 研究分担者: 富取 正彦 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助手 (10188790) ; 西川 治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (10108235) ; 荒川 秀雄 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (80211704)
• キーワード: 走査型トンネル顕微鏡 / バクテリオファージ / タバコモザイクウイルス / 生物試料 / バイオSTM

研究概要

本年度は、製作した走査型トンネル顕微鏡のソフトウェアの改良とハードウェアの操作性の改善に重点をおいた。ソフトウェア面では,トンネル顕微鏡のオペレーションを安全かつ確実にするための運動メニューの充実と、得られた映像の画像処理方法に工夫を加えた。その結果、従来より鮮明な映像を提供できるようになった。探針として白金イリジウム合金を用いるので、その電解研磨法に改良を加えてより鉛い探針が得られるようにした。このようにして清浄雰囲気下でのトンネル顕微鏡の運転が可能となったので、金属コーティングした生体試料を中心に、各種試料の観測を行った。金属コーティングしたタバコモザイクウイルス、T4バクテリオファージ、細胞、タンパク質、DNAを観察したところそれぞれの形態を映像化することができた。特にT4バクテリオファージは頭と尾が区別できたので、テイルファイバーと呼ばれる2-3nm幅の繊維の観察を試みたが、金属コーティングが厚いため明瞭に識別できる映像は得られなかった。同時に行った原子間力顕微鏡法では明らかにテイルファイバーが観測できるので、金属コーティングをできるだけ薄く、かつ電導性が得られるように行えば、2nmの解像度も可能である。タバコモザイクウイルスの場合は300nm、20nmの長さと太さをもつ棒状粒子が見える。その表面には、このウイルス特有の縞模様が見える。基板上の金属粒子よりウイルス上の粒子の方が細かく、ウイルスの微細構造を見分けるのに都合がよい。
装置の操作性が本年度になってようやくよくなったので、本装置を使っての資料観察を今後十分行ってゆきたい。

研究成果

• [文献書誌] Arakawa,H.,Umemura,K.and Ikai,A.: "Protein images obtained by STM,AFM,and TEM" Nature. 358. 171-173 (1992)
• [文献書誌] 青木 洋祐、長谷 聖美、荒川 秀雄、猪飼 篤: "生体内におけるメダラシンとインヒビターの相互作用" 炎症. 12. 361-367 (1992)
• [文献書誌] Jiang,S.その他: "Nanometric Scale Biosample Observation Using a Photon Scanning Tunneling Microscope" Jap.J.of Appl.Phys.31. 2282-2287 (1992)
• [文献書誌] Osada,T.その他: "The Active Site Titration of Proteinases by Using α_2-Macroglobulin and High-Performance Liquid Chromatography" Anal.Biochem.207. 76-79 (1992)
• [文献書誌] Imai,K.その他: "Scanning Tunneling and Atomic Force Microscopy of T4 Bacteriophage and Tobacco Mosaic Virus" Jap.J.of Appl.Phys.(1993)
• [文献書誌] Uchino,T.その他: "Isolation and Characterization of a Novel Serine Proteinase Cpmplexed with Alpha-2-macroglobulin from Porcine Gastric Mucosa" J.Biol.Chem.268. 527-533 (1993)
• [文献書誌] 猪飼 篤: "基礎の生化学" 東京化学同人, 195 (1992)