研究概要 |
動物細胞における遺伝子発現機構を解析するには,その遺伝子のプロモ-タ-領域を何らかのレポ-タ-遺伝子(例えば大腸菌クロランフェニコ-ルアセチルトランスフェラ-ゼ)と連結して動物細胞に導入し,細胞内におけるその活性からプロモ-タ-活性を類推する。最近,ルシフェリンを基質として発光を触媒するルシフェラ-ゼは,その感度などの観点から注目され,遺伝子発現のレポ-タ-として使用されつつある。ところで,海ボタル(Vargula hilgendorfii)は夜行性の動物であり,刺激が加わるとルシフェラ-ゼ,ルシフェリンを放出し,発光する。私達は,海ボタルルシフェラ-ゼのこの特徴に注目し,そのcDNAを単離した。そして,海ボタルルシフェラ-ゼはアミノ酸555残基から成る分泌性タンパク質であることを示した。 次いで,この海ボタルルシフェラ-ゼcDNAを種々の動物遺伝子(SV40,RSV,ペプチド鎖延長因子,G-CSF)などのプロモ-タ-の下流に挿入した。これらのハイブリド遺伝子をヒトやマウスの細胞株に一過的に導入したところ,それぞれのプロモ-タ-活性に対応して,ルシフェラ-ゼが培地中に分泌され,その感度はCAT assayに較べ数段優れていた。現在,このルシフェラ-ゼcDNAを動物細胞染色体に組み込み,定常的にルシフェラ-ゼが分泌されるかどうか検討している段階である。 ところで,海ボタルルシフェラ-ゼの基質であるルシフェリンは,特殊なルシフェリンであり,現在までのところ,海ボタルより精製して用いているが,大量に得ることは困難である。また,その有機合成も困難であることから,このルシフェラ-ゼcDNAを遺伝子発現のレポ-タ-として用いることが限定されているのが現状である。
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