1。NMR用コイルをマイクロ波照射用コイルと同一円筒上に設置する方式は、両者の干渉が強すぎて良好な結果が得られなかった。 2。そこでNMR用コイルをマイクロ波照射用コイルの内側に配置する方式を採用し、それぞれの位置と形状を工夫することにより、温度ジャンプ効率とNMRシグナル検出感度を共に向上させることを試みた。それぞれのコイルを400MHz、2.45GHzの周波数に対して効率よく結合させることにより、NMR試料管中0.5mlの蛋白質水溶液に対して、最高で10度/0.1秒の高速温度ジャンプ性能を達成し、且つかなりの高感度でNMRシグナルの検出を可能にした。しかし、安定性、分解能においては今後に解決すべき問題を残した。 2。1。で開発したプローブを用いて、いくつかの蛋白質に対して温度ジャンプ一次元NMRの測定を行った。いずれも200-250ミリ秒のマイクロ波照射でおよそ15度の温度ジャンプを達成した。蛋白質RNaseAについては、200-250ミリ秒のマイクロ波照射による温度ジャンプ直後(アンフォールディング中間体と考えられる)に、その高次構造が既に崩壊していることを確認した。 3。温度ジャンプ直後のRNaseAについてその構造を詳しく検討するため、温度ジャンプ二次元NMR(状態相関二次元NMR)を適用した。温度ジャンプ直後のスペクトルのうち、環プロトンシグナルの一部(チロシン、ヒスチジン)を特異的に帰属した。これらのシグナルの化学シフトには、天然状態と比べると小さいがしかし相当程度の分散が認められ、温度ジャンプ直後のRNaseAにおいてこれらのアミノ酸のミクロ環境が互いに異なることを証明した。
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