本研究の成果をまとめると次の様になる。 1.温熱療法インプラント材料のFe-Pt合金の耐食性は非常に良いことが分かったが、長期間生体内に放置されると、非常にわずかな(1.0×10^<-4>g/cm^2・month)Feの溶出が起こることが白色家兎の実験で明かになった。 2.Fe-Pt合金の溶出を防止するために、シランとりん酸を使用して、生体適合性のあるSiO_2で被覆する方法を確立した。アノード分極曲線の測定で、被覆によって耐食性が著しく改善されることが判明した。 3.ヒステレシス損による磁気発熱材料として、Fe-Pt合金の粉末が、適していることを見い出した。さらに、Fe-Pt合金粉末の粒子をSiO_2で被覆するスプレードライング法を考案した。しかし、スプレードライング法で被覆した粉末試料の発熱量が小さくなり、今後は発熱量の改善が必要である。 4.生体適合性のあるCaO-Mgo-Fe_2O_3系のセラミックス粉末材料を作製し、磁性と発熱特性を測定した。その結果、(MgO)_1-x(Fe_2O_3)x系ではx=0.525、(CaFe_4O_7)_1-y(MgFe_2O_4)y系ではy=1.0が最もヒステレシス損と発熱量が大きいことが判明した。y=1.0とx=0.525は従来材料のFe_3O_4と比較して、キューリー温度(Tc)が低く、発熱量が数倍大きく、新しいセラミックス粉末磁気発熱材料として有望であることが分かった。今後の課題として、Tcの改善をはかる必要がある。 5.Fe-Pt合金インプラントを使用して、悪性脳腫瘍と舌がんの温熱療法の臨床的応用研究を行なった。脳腫瘍では温熱療法の効果が45.5%、舌がんでは100%の効果があることが分かった。今後は同合金の被覆インプラントの臨床的応用研究が必要である。
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