研究は当初の予定通り進んでいる。 まず、藁谷は出来事の分析の論理的枠組みとして有効に機能する論理的枠組みの基礎を明らかにしてきた。その際、通常用いられる論理的体系(述語論理)の哲学的仮定を分析し、その仮定が論理的に不必要であることを哲学的かつ技術的観点から指摘してきた。また来年度の展望としては、平成二年度までに獲得された哲学的・技術的成果を論理的に体系化し、その論理的体系の高階の部分を形成する必要があることを認識するに至った。第二には、「部分と全体に関する一般的理論」の研究に重点を置いてきた。出来事はその特性として、「(時空的に)重なる」、「(時空的に)広がる」等の性質をもっているが、これを論理的に把握するためには、時空概念の理解に先立って、「重なる」、「広がる」等の概念の論理的性質を一般的に分析する必要があるということを明らかにした。 桑子はアリストテレスの行為と価値に関わる理論を東洋哲学との比較において明らかにするとともに、アリストテレスの行為の理論において重要な位置をしめる快楽の問題について論じ、またそのことによって、行為の問題における個別性、一般性の問題について新たな着想を得るにいたった。 奥田は科学的説明に関する問題点を、これまでの研究を進める形でさらにあきらかにしてきた。
|