研究概要 |
三ヵ年計画の第一年度として,本年度はとくに中古天台関係資料については,叡山文庫,大谷大学図書館,龍谷大学図書館,身延山短大図書館,立正大学図書館,内閣文庫,国文学研究資料館,神奈川県立金沢文庫等の公的機関,および比叡山延暦寺,総本山西教寺,廬山寺,二尊院,善峰寺,三鈷寺,妙法院,曼殊院等の諸寺院を調査し,また浄土教関係資料については,先述の金沢文庫,西教寺,三鈷寺,善峰寺等を重点的に調査し,すべてマイクロフィルムに収めることができた。次いでマイクロフィルム所収文献の焼付,および整理作業をおこなった。その上で,一部ではあるが,文献写本類の解読作業に着手した。 法然門流諸派は,中古天台との関り方に視点を置くと,大別して二つのグル-プに分類できる。第一は鎮西義,諸行本願義のグル-プで,このグル-プには宝地房證真の本覚法門批判の影響がきわめて強い。第二は一念義,西山義,長楽寺義のグル-プで,このグル-プには本覚法門のうち、大原流,椙生流の影響が強くみうけられる。したがって,第一のグル-プの教義的特徴と,證真の本覚法門批判との関わりについて,具体的に一つ一つ問題を解明し,積みあげてゆく必要がある。また第二のグル-プに関しては,大原流,椙生流の本覚法門と,一念義・西山義・長楽寺義との共通点について、これも具体的に一つ一つ問題を解明し,論証を積みあげてゆくことが繁急の課題である。 次の第二年度では宝地房證真の本覚法門批判を軸として法然門流各派と本覚法門との関り方について具体的に解明したい。
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