中世ヒンドゥイズムのなかでのバクティ(帰依)運動の高まりとともに、シャンカラからラ-マ-ヌジャ以降への変化に代表されるように、瞑想からの帰依へという救済手段の転換が認められるが、それはどのような思想史的変化としてとらえうるのかという点を明らかにした。すなわち、中世ヒンドゥイズムにおける救済理論の瞑想から帰依への転換に焦点をあてて、『バガヴァッド・ギ-タ-』にたいするシャンカラとラ-マ-ヌジャ、マドヴァの註解を中心に、「シャンカラの瞑想主義からラ-マ-ヌジャ、マドヴァの帰依への転換」という形で、瞑想から帰依への転換の救済論上の意義を問題にし、救済理論の瞑想から帰依への転換の背後には、世界の実在性に対する否定的態度から肯定的態度への転換、それにともなう人間の世俗的・社会的行為に対する否定的態度から肯定的態度への転換という、大きくとらえればインドにおける古代的思惟から中世的思惟への転換があることを明らかにした。 その成果は、まずシャンカラからラ-マ-ヌジャへの思想的変化に関してはすでに平成3年10月に名古屋大学で開催された南アジア学会で発表し、さらにその学会誌『南アジア研究』に掲載される予定である。また、マドヴァに関しては、『宮坂宥勝博士古希記念仏教学印度思想論集』に掲載予定である。
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