研究課題/領域番号 |
02610015
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
土屋 博 北海道大学, 文学部, 教授 (30000607)
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研究分担者 |
佐々木 啓 北海道大学, 文学部, 助手 (20178643)
宇都宮 輝夫 北海道大学, 文学部, 助教授 (40109400)
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キーワード | ヨハネ福音書 / 文学批評 / 代名詞 / Karl Barth / 死 / 社会総合 / 牧会書簡 / パウロ |
研究概要 |
本研究は、初期キリスト教の生活世界と言語と思想を探求し、さらにそれらを突き合わせてその相互連関を解明しようとするものであった。その具体的な研究方法については、交付申請書に四点にわたって記載しておいた。それぞれの点に関してどのような成果があげられたかを以下に順次述べて行く。 (1)従来の歴史的・批判的方法に基づく聖書研究は、本研究の基礎作業である。この方面の成果は、土屋の著書と佐々木の論文において公表された。(得られた新知見は、その内容を逐一具体的かつ詳細に述べなければ意味がないので、字数制約上、割愛せざるをえない。) (2)生活世界の構造、生活世界と宗教との関わりという宗教社会学上の一般理論的考察は、宇都宮の論文「宗教者と精神科医」において成果の一部が展開されている。それによれば、生活世界に固有の世界観は、そこでの生活様式に規定され、それと対応関係にある。そして生活世界の世界観は、その基本が何らかの象徴体系のうちに折出してくるが、それが個々の具体的宗教である。従って、個々の宗教の意味は、それが言語的文法的に事実命題として語ることのうちにあるのではない。宗教の力は、それが象徴している世界観との連関のうちにのみあり、それを脱け出ては人々への作用力も失わざるをえないのである。 (3)佐々木論文は、最近の一般言語学理論、言語哲学、文学理論等をヨハネ福音書研究に適用しつつ、そこに見られる言語使用上の特徴、具体的には代名詞の使用状況に注目し、ヨハネ福音書の独特な言語戦略を明らかにした。例えば、ヨハネでは一人称代名詞の多用が認められるが、文脈依存性という代名詞の基本機能から考えて、それは直接的にはイエスが語るという形をとりつつ実はイエスについて語る物語方法なのである。
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