平成2年度は、国立文楽劇場所蔵の「浄瑠璃雑誌」337冊をマイクロ複写し、その内容について悉皆的調査を行って分類・整理した。その結果を踏まえて現在、目次集を作成中である。この目次集をデ-タベ-ス化することによって、これまで殆ど取り上げられなかった「浄瑠璃雑誌」を、多くの研究者が注目することになるだろう。但し、平成3年度に予定している88冊の収集並びに分類・整理作業を残っているため、本年度のみのまとまった実績を十分に示し得ないことは残念である。 本研究は、上記の分類・整理作業を終えた後、特に「彦六系の記述」に関する部分を抽出してその内容を詳細に分析し、劇評や種々の記事によって「彦六系の芸」の実態に迫ろうというものである。そのため平成2年度は、義太夫節に関する音楽学的研究の第一人者である井野辺潔氏(大阪音楽大学教授)や、「浄瑠璃雑誌」の執筆者であった文楽研究家の吉永孝雄氏、また「浄瑠璃雑誌」について造詣の深い桜井弘氏(国立文楽劇場調査資料係)などに直接お目にかかり、それぞれの立場からの「浄瑠璃雑誌」に関する考えをお聞きし、8ミリビデオに記録した。この聞き取り調査は平成3年度にも予定している。対象となるのは「浄瑠璃雑誌」を最初に取り上げた研究者の佐藤彰氏(現在静岡県に在住)、文楽研究家の内山美樹子氏(早稲田大学教授)他である。 「浄瑠璃雑誌」は、明治32年2月の創刊から昭和20年2月の終刊までに、425冊出版された。しかし残念ながら第18号が欠号しており、その所在は現在まで確認されていない。この欠号を捜し出すことも本研究の課題である。第18号の発見のためにも、本研究の成果を広く世に問う必要がある。
|