平成3年度は、大阪府立中之島図書館所蔵の「浄瑠璃雑誌」88冊を収集し、その内容について悉皆的調査を行って分類・整理した。その結果を踏まえて、現在、目次集を作成中である。この目次集を完成し、研究成果報告書として提出することによって、これまで殆んど取り上げられなかった「浄瑠璃雑誌」を、多くの研究者が注目することを期待している。 本研究は、上記の分類・整理作業を終えた後、特に「彦六系」に関する記述部分を抽出して、その内容を詳細に分析し、劇評や種々の記事によって「彦六系の芸」の実態に迫ろうというものである。入手した資料を正確かつ客観的に検討するため、平成3年度は「浄瑠璃雑誌」に関する先行研究者の佐藤彰氏(静岡県浜松市に在住)にお会いして、氏の研究動向や「浄瑠璃雑誌」に関する疑問を直接佐藤氏に質問し、貴重なご教示を頂いた。また前年度に引き続き、義太夫節に関する音楽学的研究の第一人者である井野辺潔氏(大阪音楽大学教授)にお話を伺うと同時に、氏のご所蔵の「浄瑠璃雑誌」106冊(319号〜425号[367号欠])をお借りした。 目次集は一応の完成はみたものの、膨大な量の本文との照合に多大の時間を要し、今後、数回にわたる見直し作業を経て、研究成果報告書を完成することになる。 尚、原資料の所在について調査したところ、今回入手した国立文楽劇場所蔵の337冊以外の、同劇場に欠けている88冊、つまり大阪府立中之島図書館所蔵の88冊(同図書館は「浄瑠璃雑誌」を全部で374冊所蔵している)の所在が、同図書館以外には確認されなかった。そして、同図書館所蔵の大正期の「浄瑠璃雑誌」に関しては、その保存状態が良好でないため、この雑誌の復刻の必要性を痛感した。 付記〔明治32年2月の創刊から昭和20年2月の終刊までに、425冊出版されたうち、第18号が欠号しており、その所在は現在まで確認されていない。この幻の欠号を捜し出すことも残された重要な課題である。第18号発見のためにも、本研究の成果を広く世に問う必要がある。〕
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