研究概要 |
平成2年度は当初の計画にもとづき以下のような結果を得た。1)医療現場での登校拒否児についてその実態を把握するため計30症例について調査を行った。その結果,医療現場における登校拒否児の内訳は,中学生以上25名,小学生以下5名であり,約83%が中学生以上の登校拒否児であった。小学生以下の登校拒否児はほとんどがDSMーIIIR診断AxisIの分離不安障害と診断され,中学生以上の登校拒否児は、回避性障害や適応障害と診断される症例が多かった。2)上記の医療現場における症例に対して生体リズムについての調査を行った。その結果,調査対象のうち約23%が昼夜逆転を経験,約42%がリズムの乱れを経験しており,合計すると全体の65%に生体リズムの異常が認められた。3)生体リズム障害の重症度と欠席日数の長さとの関係について検討すると,昼夜逆転のある症例で有意に欠席日数が長かった。4)登校拒否発症の学年と生体リズムの乱れとの関係を調べたところ,両者の間に統計的に有意な関係は認められなかった。5)DSMーIIIR診断のAxisIと生体リズムの乱れとの関係についても統計的に有意な関係は認められなかった。6)登校拒否症例全例について就学前の睡眠習慣について調査したが,一貫した特徴を見いだすことは出来なかった。7)以上から、登校拒否児のかなりの部分に生体リズムの障害が認められ,それが欠席日数の長さと密接な関係のあることがわかった。リズムの障害の程度が学年(年齢)や診断名と関連のないことなどから,リズムの障害は長期間の不登校の結果であると思われるが,リズムの障害が長期間の不登校の原因という逆の可能性も残されている。今後、症例数を追加し以上を明確にする予定である。 8)現在,民間のボランティアや学生諸氏の協力を得て登校拒否児のための塾を試行的に運営している。
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