研究概要 |
1)児童精神医学的アプロ-チでは,登校拒否という概念自体が曖味であることから,登校拒否に関わる人々が実際に持つ登校拒否の概念を整理した。その結果、登校拒否が意味する対象は非常に多岐にわたり,少なくとも現時点では登校拒否とは典型的な神経症的中核群だけを指すのではなく,その他の用辺群を包含する非常に多様な概念であった。そこで,多様な症例を包含する「登校拒否」を理解するために,DSMーIIIーRと多変量解析を用いて精神医学的な分類を試みた結果、神経症的な登校拒否児が最も多くを占めたが,次に多かったのは怠学傾向を有する非典型的な登校拒否児であった。2)時間生物学的アプロ-チでは,登校拒否児に認められる随伴症状のひとつである睡眠リズムの障害について検討した。その結果,医療機関を受診する登校拒否児の約7割に睡眠リズムの障害が認められ,リズムの障害は社会的接触などの同調因子の減少と密接に関連していると考えられるため,同調因子の減少を引き起こすと思われる欠席日数そのものをとりあげ,リズムの障害との関連を検討した。その結果,リズムの障害は,欠席日数(および欠席率)の増加とともに重症化する傾向のあることが明らかになった。リズムの障害は登校拒否の発症後に起きていることから,二次的な障害であると考えられたが,特に重症化したリズム障害は,欠席を長期化させる可能性も考えられた。3)心理臨床学的アプロ-チでは,中間施設「ごんた塾」での実践,家族療法による治療事例,学校現場での治療実践の経験を紹介するとともに,人と人との関わり合いからシステムが生れ,個人の治療への方向づけが生じるとともに、システムを構成する他者にも変化が生じることを明らかにした。また,家族という単位でも,中間施設での人間関係の中でも、学校という環境の中にでも,治療共同体としてのシステムを構成することが可能であることも明らかになった。
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